呪われた柿の木

ある古い家に、渋柿の木がありました。
その渋柿はもう家主の手に負えないほど、道路にはみだしていて、
だから、この木を本当は手入れしたい、
でも家主さんは「切るのは良くないことを呼ぶから」と言い、剪定しようとしませんでした。
その言葉を聞いてから、この木はまるで呪いのようなものを背負っているように見えました。
そんな渋柿の木は昨年、目を見張るほどの柿の実をつけました。
でも、渋いからか、人の手に収穫される様子もなく残っています。
それでも、鳥は食べに来るかなと思っていたけれど、鳥さえも食べない。
誰にも見向きもされぬまま、時々、冷たいアスファルトに落ちては、オレンジ色の血飛沫みたいな姿をさらしました。
呪われたように見られ、誰に食べられるともなく、その種は芽吹かない。
なんだか見ていて、辛い光景でした。
やがて、柿の葉だけが落ち、
冬が来ても、その柿の実はまだまだたくさん、なったまま。
風に吹きさらされる日も
分厚い雪がその実に積もる日も、
多くの実は何かを待っているように、落ちようとしませんでした。
そして雪が溶けたある日のこと。
ふと、鳥が…
鳥が、その柿の実をついばみにきているのを見ました。
いろいろな種類の鳥が、静かに、でもたしかに、味わうように食べにきていた…
そうか、天然の干し柿みたいになって、
甘くなった時が来たのかも。
それを想い、ああ、よかったなと、涙が出た。
鳥たちの明日を繋ぐその実の種は、いつかどこかでまた芽吹いてゆく。
どんなに厳しいときがあっても、
どうしてか世界は、放っておいては、くれない。

心の奥の灯りをそっと想い出す、小さな隠れ家。

もう同じ生き方ではいられない… そう静かに感じはじめているあなたへ
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